ミャンマーの宗教は仏教だけではない? 宗派構成や独自の慣習を紹介
生活基本 2018年11月06日

ミャンマーの宗教事情はどうなのでしょうか? 仏教色の強いミャンマーですが、実は他宗教を信仰する人たちもいます。それにより、宗派間の争いが起きているのも事実です。ミャンマーで最大の課題とも言えるロヒンギャ問題も宗派間の争いが一端となって引き起こされている問題です。そこで今回はミャンマーの宗派構成や独自の慣習について紹介します。
ミャンマーの宗派構成
外務省の統計によると2018年現在、ミャンマー人のおよそ90%が仏教徒です。国勢調査の結果では他にキリスト教が6%、イスラム教4%、ヒンドゥー教0.5%、その他1%、無宗教0.1%だという結果が出ています。仏教徒が大半を占めていることにより、慈善や修行僧などを重んじるミャンマー独自の習慣が形成された反面、少数民族や少数派の宗教を弾圧する行為などが行われているのが現状です。ミャンマーで各宗教ごとについて詳しく紹介します。
仏教
ミャンマー人のおよそ90%が仏教徒です。ミャンマーでは仏教の中でも上座部仏教が信仰されています。上座部仏教はミャンマーやタイに伝わった仏教であり、日本や中国へと伝来した大乗仏教と区別して小乗仏教と呼ぶこともあります。釈迦のみを信仰対象とし、厳しい修行を積んで功徳を積むことで来世の幸せを願う「来世信仰」が信仰されています。また、自然を神格化する「ナッ」という信仰も強く根付いています。ミャンマーではパゴダにナッ神の祠があるのも普通です。
また、ミャンマーでは出家が身近なものです。最短で1日から出家が可能であり、家族や友人と一緒に仏教関係の祝祭日に合わせて出家する人もいます。もちろん、長期間に渡って出家する修行僧も数多くいます。ミャンマーでは出家をすると10の戒と227の律という厳しい戒律を守らなくてはいけないため、修行僧は格別の念をもって尊敬されています。ミャンマーは釈迦の教えを最も忠実に守り、敬虔な仏教徒がとても多い国です。
キリスト教
意外かもしれませんが、ミャンマーでは少数民族を中心にキリスト教も普及しています。キリスト教徒は国民全体のおよそ6%であり、約320万人ものキリスト教信者がいます。
仏教の建築物である黄金のパゴダが有名であり、観光名所となっていますがミャンマーにはキリスト教の教会も数多くあり、日曜日には聖歌や賛美歌などが歌われています。
キリスト教信者の大半が少数民族なのにはミャンマーの歴史が関係しています。19世紀にイギリスが植民地とした地域の占領政策の一貫としてキリスト教の布教を進めていきました。
人口の7割を占めるビルマ族の宣教政策としてキリスト教を布教しましたが、ビルマ族やその他の大きな民族には既に仏教が根強く信仰していたので、普及しませんでした。
ミャンマー全土に布教活動を行いましたが、結果としてキリスト教が浸透したのは国境地帯の少数民族のみでした。そのため、ビルマ族の居住区域よりも国境地帯の方が多くキリスト教関連の施設があります。
イスラム教
全人口の4%ほどを占めているイスラム教徒の大半は、国境近くのラカイン州に居住しています。ほとんどは、植民地時代に英領インドから流入した移民の子孫やミャンマーの土着民族との間に生まれた人たちです。ニュースなどで「ロヒンギャ」と呼ばれている人たちですが、「ロヒンギャ」は自称であり、ミャンマー政府やミャンマーの仏教徒は民族として認めていないため「ラカイン州の人々」や「ベンガリ(ベンガル地方から来た人たち)」「カラー(肌の色が黒い人という蔑称)」といった呼称で呼んでいます。
ロヒンギャへの弾圧行為は激しく、残虐な事件も数々生じています。ロヒンギャ問題は日本も関与した国際問題となり、早期解決が求められるミャンマーで最も重要な問題だと言えます。問題はかなり根深いため、ミャンマーではロヒンギャ問題に関する発言には細心の注意を払う必要があります。
ヒンドゥー教
ミャンマーにはヒンドゥー教の信者が0.5%ほどいます。実数では26万人〜27万人ほどです。ミャンマーのヒンドゥー教信者は2018年現在、宗教対立によって困難な状況にあります。
ビルマ族や政府からの弾圧を受けているのはロヒンギャと呼ばれる人々ですが、ヒンドゥー教信者はロヒンギャから弾圧を受けている立場にあります。
2017年にはロヒンギャの武装勢力からの襲撃を受け、ヒンドゥー教の信者が集団殺害を受けるという事件が発生しました。ミャンマー政府はロヒンギャの仕業としてロヒンギャを非難しましたが、襲撃の真相が分かっていないため、真相はまだ明確には分かっていないままです。
ミャンマー政府とロヒンギャの両者で板挟みになっており、隣国のバングラデシュへと逃亡する難民も数多くいます。
ミャンマー独自の慣習
日本人が入れることのできる区域では仏教が根強く浸透しています。そのため、日本人がミャンマーで観光や滞在をする際にはミャンマーの仏教の習慣を把握しておくことが大切です。そこで仏教色の強いミャンマー特有の習慣や観光時の注意事項について紹介します。
1.生まれた曜日を重視する
ミャンマー人は宗教上の理由から自分が誕生した日の曜日を重視する慣習があります。パゴダの祠は生まれた曜日によって分けられているほか、お供えをする時に用いる数珠も曜日によって種類が異なります。
また、冠婚葬祭でも曜日が重視され、結婚する相手との相性を曜日で判断する人も多くいます。ミャンマーの仏教徒は自分の生まれた曜日を把握しているのが当たり前のため、ミャンマーに行く予定のある日本人は把握しておくと会話で役に立つことがあるかもしれません。
2.墓地を設けない
ミャンマーの仏教は上座部仏教です。上座部仏教の教えは輪廻転生であり、体は魂の容れ物という考え方が浸透しています。そのため、身体は軽視され遺体を安置する墓地も設けられないのが一般的です。
ミャンマー人が逝去した場合、遺体は火葬場で焼かれ、遺灰はゴミとして処分されます。上座部仏教が浸透したミャンマーならではの習慣と言えます。
3.仏教関連の祝日が存在する
ミャンマーの祝日は国家の成り立ちに関する記念日と仏教に関する記念日の2種類があります。国家の成り立ちに関連する記念日の日付は毎年固定されていますが、仏教関係の祝日は毎年直前に決められるのが一般的です。
そのため、毎年祝日が変動されます。仏教関係の祝日は当該月の満月の日に定められることが多いのが理由です。ミャンマー特有の祝日ですが、日程が定かではないため一時帰国や出張の日程を決めにくく、日本人在住者や出張者にとっては少し不便かもしれません。
4.パゴダに行く際の注意事項
観光名所として名高い「シュエダゴン・パゴダ」や「スレー・パゴダ」などのパゴダは宗教施設であるため、訪れる際には注意事項があります。まず、肌の露出が多い服装は男女ともに避ける必要があります。また、寺院の中だけでなく、敷地内では靴下や靴を脱ぐ必要があります。
また、僧侶は異性の体に触れることも禁止されているため電車や観光地で僧と会った際に注意が必要です。僧侶の体に触れることや電車の座席を譲るなどの配慮をするようにしましょう。
まとめ
今回はミャンマーの宗教事情について紹介しました。日本人は仏教徒以外と触れ合う機会があまりありませんが、仏教特有の慣習や他宗教に関する言動には注意するようにしましょう。
※この記事に記載されている情報は2018年12月のものです。本記事に記載されている情報は予告なしに変更される場合がございますが、ご了承ください。
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